配送中に荷物を落として壊してしまった、雨で箱が濡れて中身がだめになった――。軽貨物ドライバーにとって、荷物の破損は「いつか必ず起きる」トラブルです。そのとき一番気になるのは「結局いくら弁償するのか」「そのうち自分の財布から出るのはいくらか」でしょう。
この記事では、国土交通省が告示で定めている標準貨物軽自動車運送約款と商法の運送営業の規定を条文ベースで確認し、①賠償額がどう算定されるのか、②どんな場合に運送人の責任がなくなるのか、③元請との業務委託契約と貨物保険を踏まえて委託ドライバーが実際にいくら自己負担しうるのか、を具体的な計算例で整理します。事故直後の初動や元請への報告の流れは軽貨物の配送中に事故を起こした時の対応|初動と元請け報告の流れで解説しているので、ここでは「金額の決まり方」に絞ります。
結論:弁償額は「届くはずだった場所・時点の荷物の価額」が基準、自己負担は契約と保険で決まる
先に要点をまとめます。
- 賠償額の基準は「引渡しがされるべき地及び時」の貨物の価額です(標準貨物軽自動車運送約款 第47条、商法第576条)。集荷した場所や購入時の値段ではなく、「届け先で、届くはずだった時点で」いくらの価値があったかで決まります。
- 全部滅失はその価額そのもの、一部滅失・損傷は「無傷だった場合の価額」と「実際に引き渡した状態の価額」の差額が賠償額になります(約款第47条第1項・第2項)。
- 滅失・損傷のために請求しないことになった運賃は賠償額から差し引きます(約款第47条第3項、商法第576条第2項)。
- ただし運送人の悪意(故意)・重大な過失があると、この算定ルールは使えず、生じた一切の損害を賠償することになります(約款第48条、商法第576条第3項)。
- 高価品は、荷送人が種類と価額を通知していなければ原則として免責(約款第45条、商法第577条)。天災や荷送人側の過失などの免責事由もあります(約款第44条)。
- 委託ドライバーの実際の自己負担額は、上記で決まった賠償額を元請との業務委託契約の損害賠償条項と、貨物保険の支払限度額・免責金額に当てはめて決まります。保険に入っていても、免責金額(自己負担額)分は手元から出るのが普通です。
以下、それぞれを条文に沿って見ていきます。
標準貨物軽自動車運送約款とは:運送人の責任を定めた「ひな形」
標準貨物軽自動車運送約款は、平成15年国土交通省告示第171号として定められた、貨物軽自動車運送事業(いわゆる黒ナンバーの軽貨物)の運送契約のひな形です。国土交通省の「標準運送約款」のページで公開されている現行版には、最終改正が令和7年国土交通省告示第193号と記載されています。
約款第2条は、運送契約はこの約款の定めにより、約款に定めのない事項は「法令又は一般の慣習」によるとしたうえで、第2項で「法令に反しない範囲で、特約の申込みに応じることがあります」と定めています。つまり、約款は標準的なルールであり、個別の契約(元請との業務委託契約など)で違う取り決めがされることもある、という位置づけです。
損害賠償に関係するのは主に「第八節 責任」(第39条〜第51条)です。主な条文を一覧にすると次のとおりです。
| 条文 | 見出し | ポイント |
|---|---|---|
| 第39条 | 責任の始期 | 滅失・損傷の責任は、荷送人から貨物を受け取った時に始まる |
| 第40条 | 責任と挙証 | 受取から引渡しまでの滅失・損傷・延着は賠償責任。ただし運送人側が「注意を怠らなかったこと」を証明すれば免れる |
| 第44条 | 免責 | 貨物の欠陥・性質、天災、荷送人・荷受人の故意過失など7つの事由は責任を負わない |
| 第45条 | 高価品に対する特則 | 種類と価額の通知がない高価品は責任を負わない(例外あり) |
| 第46条 | 責任の特別消滅事由 | 荷受人が留保なしで受け取ると一部滅失・損傷の責任は消滅(隠れた損傷は2週間以内の通知で存続) |
| 第47条 | 損害賠償の額 | 引渡しがされるべき地及び時の価額で算定。延着は運賃等の総額が上限 |
| 第48条 | (悪意・重過失) | 悪意・重大な過失なら一切の損害を賠償 |
| 第49条 | 除斥期間 | 引渡しの日から1年以内に裁判上の請求がなければ責任は消滅 |
| 第51条 | 賠償に基づく権利取得 | 全部の価額を賠償したら、その貨物に関する一切の権利を取得 |
商法にも運送人の責任について同じ骨格の規定があります(第575条 運送人の責任、第576条 損害賠償の額、第577条 高価品の特則、第584条 運送人の責任の消滅、第585条 1年の期間)。約款は商法の考え方をほぼそのまま引き継いでいると考えてよいでしょう。
公開情報の要点:運送人は、貨物の受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着によって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人(と運送のために使用した者)が受取・運送・保管・引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
ここで押さえたいのは証明責任が運送人側にある点です。荷物が壊れて届いた場合、「自分は注意していた」ことを運送人の側で示せなければ責任を負います。「どこで壊れたか分からない」は基本的に運送人に不利に働く、ということです。
賠償額の算定方法:どの時点・どの場所の価格で計算するのか
基準は「引渡しがされるべき地及び時」の価額
約款第47条第1項は、全部滅失の場合の賠償額を「その引渡しがされるべき地及び時における貨物の価額」で定めるとしています。商法第576条第1項はさらに具体的で、「市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)」により、市場価格がないときは「その地及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格」によると定めています。
実務的に言い換えると次のようになります。
- 「場所」は集荷地ではなく届け先。
- 「時点」は荷物を受け取った日や購入日ではなく、本来届くはずだった時点。
- 「価格」は荷主の言い値ではなく、その時点・場所での客観的な価格(市場価格、なければ同種同品質の正常な価格)。
たとえば通販の商品であれば、届け先の時点で同じ新品を手に入れるのに必要な価格が目安になります。価額や損害額で争いがあるときは、約款第47条第4項により「公平な第三者の鑑定又は評価」で決めることとされています。
全部滅失・一部滅失・損傷ごとの算定式
約款第47条の第1項〜第3項を整理すると、算定式は次の表のとおりです。
| 損害の種類 | 該当する例 | 賠償額の算定(約款第47条) |
|---|---|---|
| 全部滅失 | 荷物を紛失した/全損で商品価値がゼロになった | 引渡しがされるべき地・時の貨物の価額(第1項) |
| 一部滅失 | 複数個口の一部を紛失/箱の中身の一部がなくなった | 無事だった場合の価額 − 実際に引き渡した貨物の価額(第2項) |
| 損傷 | 落下でへこみ・傷がついた/水濡れで一部使えなくなった | 無傷だった場合の価額 − 損傷した状態の価額(第2項) |
| 共通の控除 | 滅失・損傷のため荷送人等が払わなくてよくなった運賃等 | 上記の賠償額から差し引く(第3項) |
| 延着 | 指定日時に遅れた | 運賃、料金等の総額が上限(第5項) |
損傷の場合、「修理代」ではなく「価額の差」が基準になっている点に注意してください。実際の交渉では修理費用を価額の減少分の目安として使うこともありますが、条文上の考え方はあくまで「無傷の価額」と「損傷後の価額」の差です。
運賃の控除(第47条第3項・第36条第1項)
約款第36条第1項は、貨物が天災その他やむを得ない事由により滅失し若しくは相当程度の損傷を生じたとき、又は運送人が責任を負う事由により滅失したときは、その貨物の運賃・料金等を請求せず、すでに受け取っていれば払い戻すと定めています(運送人の責任による損傷はこの条項に挙げられていません)。そのうえで第47条第3項により、払わなくてよくなった運賃等は賠償額から控除します。二重取りを防ぐための調整です。
全額賠償したら荷物は運送人のものに(第51条)
全部の価額を賠償したときは、運送人がその貨物に関する一切の権利を取得します(約款第51条)。たとえば「外箱がつぶれて販売できなくなった」として全額を支払った場合、中身は運送人側が引き取れる、という整理になります。
計算例:荷物を壊したときの賠償額はいくらになるか
ここからは、条文の算定式に数字を当てはめた仮定の計算例です。実在の事例ではなく、考え方を示すための設例として読んでください。
例1:全部滅失(紛失)
仮に、届け先時点での市場価格が50,000円の家電を紛失し、その1個口の運賃が1,200円だったとします。
- 引渡しがされるべき地・時の価額:50,000円
- 払わなくてよくなった運賃の控除:−1,200円
- 賠償額:48,800円
例2:損傷(落下で外装とパネルに傷)
仮に、無傷なら80,000円の商品が、傷によって30,000円の価値しかなくなったとします(鑑定・評価で決まった額と仮定)。運送人の不注意による損傷は第36条第1項の運賃不請求の対象に挙げられていないため、この例では運賃の控除はないものとします。
- 無傷の価額 − 損傷後の価額:80,000円 − 30,000円 = 50,000円
- 運賃の控除:なし(第47条第3項は第36条第1項で支払不要となった運賃等の控除)
- 賠償額:50,000円
全部の価額(80,000円)を賠償して引き取る形で決着することもありますが、その場合は第51条により貨物の権利が運送人側に移ります。
例3:高価品で通知がなかった場合
約款第10条第1項第3号は、「容器及び荷造りを加え1キログラム当たりの価格が2万円を超える貨物(動物を除く。)」を高価品としています(1kg当たりの計算は一荷造りごと・同条第2項)。仮に、梱包込み0.5kgで60,000円の小型電子機器であれば、1kg当たり120,000円となり高価品に当たります。
荷送人が申込み時に種類と価額を通知していなければ、約款第45条第1項により運送人は損害賠償責任を負いません。ただし、運送人が契約時点で高価品だと知っていた場合、または運送人の故意・重大な過失で損害が生じた場合はこの免責は使えません(同条第2項)。
例4:延着の場合
時間指定に遅れたことによる損害は、約款第47条第5項により運賃、料金等の総額が上限です。仮に運賃1,500円の荷物が延着し、荷受人側で何らかの損害が出たとしても、約款上の賠償は1,500円までとなります(悪意・重過失の場合を除く)。
運送人が責任を負わない・責任が消える場合
免責事由(約款第44条)
約款第44条は、次の事由による滅失・損傷・延着その他の損害について、運送人は賠償責任を負わないと定めています。
| 号 | 免責事由 | 軽貨物で想定しやすい場面 |
|---|---|---|
| 1号 | 貨物の欠陥、自然の消耗、虫害又は鼠害 | もともと初期不良だった商品 |
| 2号 | 貨物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さび等 | 生鮮品が性質上傷んだ(ただし保管の不注意があれば別) |
| 3号 | 同盟罷業、同盟怠業、社会的騒擾その他の事変又は強盗 | 配送中の強盗被害 |
| 4号 | 不可抗力による火災 | もらい火など |
| 5号 | 地震、津波、高潮、大水、暴風雨、地すべり、山崩れ等その他の天災 | 冠水・地震による荷崩れ |
| 6号 | 法令又は公権力の発動による運送の差止め、開封、没収、差押え又は第三者への引渡し | 行政・捜査機関による差押え |
| 7号 | 荷送人又は荷受人の故意又は過失 | 荷送人の梱包不良、荷受人の受取時の取り落とし |
注意したいのは、「雨の日だったから」は天災には当たらないということです。通常の雨で濡らしてしまったのは、一般的には運送人の注意(防水・積み方)の問題として扱われます。濡損を防ぐ具体策は軽貨物の雨天配達マニュアルにまとめています。
また、約款第42条は、中身を容易に知ることができない荷物について、荷送人の申告どおりに品名・価額等を記載した場合、その記載について運送人は責任を負わないとし、第43条は申込書や外装表示、荷送人の申告が不実・不備だったことによる損害は運送人が責任を負わない(逆に運送人が損害を被れば荷送人が賠償する)と定めています。
留保なしの受取で責任が消える(約款第46条・商法第584条)
一部滅失・損傷についての責任は、荷受人が留保しないで貨物を受け取ったときは消滅します(約款第46条第1項)。ただし、直ちに発見できない損傷・一部滅失があった場合に、引渡しの日から2週間以内に運送人へ通知が発せられたときは消滅しません。また、引渡し時点で運送人が損傷を知っていた場合はこの消滅ルールは適用されません(同条第2項)。
荷送人が第三者(荷主)から委託を受けた貨物を運送する場合、つまり元請から下請として運ぶケースでは、荷送人(元請)が荷受人側から通知を受けた日から2週間を経過する日まで期間が延長されたものとみなされます(同条第3項)。商法第584条第3項にも同趣旨の規定があります。元請経由で「後日、中身が壊れていたと連絡が来た」という場合、この延長規定により請求を受けうる、ということです。
1年で責任が消える(約款第49条・商法第585条)
運送人の責任は、貨物の引渡しがされた日(全部滅失の場合は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないときは消滅します(約款第49条第1項)。この期間は損害発生後に限り合意で延長できます(同条第2項)。下請として運送した場合、荷送人(元請)が1年以内に損害を賠償し、または裁判上の請求をされたときは、そこから3か月を経過する日まで延長されたものとみなされます(同条第3項、商法第585条第3項も同趣旨)。
悪意・重大な過失は例外(約款第48条・商法第576条第3項)
ここまでの算定ルールや上限は、運送人の悪意又は重大な過失によって滅失・損傷・延着が生じたときには適用されず、「それにより生じた一切の損害」を賠償することになります(約款第48条)。たとえば荷物の転売で荷主が失った利益なども請求対象になりえます。高価品の免責(第45条第2項第2号)も同様に使えなくなります。
委託ドライバーが実際にいくら自己負担するか:3つの要素で決まる
ここまでは「運送人が荷送人・荷受人に対して負う責任」の話でした。委託ドライバーが実際に負担する金額は、次の3つを順番に当てはめて決まります。
- 賠償額そのもの:上で見た約款・商法の算定(元請が荷主に払う額のベース)
- 業務委託契約の損害賠償条項:元請が払った額をドライバーにどこまで請求できると定めているか
- 貨物保険:誰が加入しているか、支払限度額と免責金額はいくらか
業務委託契約でよく見る損害賠償条項のパターン
委託ドライバーと元請の間の条件は契約書次第で、一律の決まりはありません。約款第2条第2項のとおり、法令に反しない範囲で特約が結ばれることがあります。典型的な書き方は次のようなものです(以下は一般的なパターンの整理で、特定の会社の条項ではありません)。
- 全額負担型:「乙の責めに帰すべき事由により貨物に損害が生じたときは、乙はその損害を賠償する」
- 保険優先・免責額負担型:「甲の加入する貨物保険で補償し、保険の免責金額及び保険で填補されない損害は乙が負担する」
- 上限・定額型:「1事故あたり◯万円を上限とする」「1件につき◯円を支払う」(民法第420条の賠償額の予定・違約金にあたる定め)
- 報酬相殺型:「損害賠償額を翌月の委託料から控除する」
契約書でこの条項をどう確認すべきかは業務委託契約書チェックポイント|サイン前に見る7条項で詳しく扱っています。
貨物保険の「支払限度額」と「免責金額」
貨物保険(運送業者貨物賠償責任保険など)の保険金は、一般に「損害額 − 免責金額」を支払限度額まで支払う形で設計されています。免責金額は「1事故あたり◯万円は自己負担」という意味で、保険に入っていてもこの部分は保険金が出ません。また、貨物の種類(精密機器・美術品・生鮮品など)や事故の態様によっては対象外とされることがあります。加入している保険の支払限度額・免責金額・対象外となる貨物は、必ず保険証券と約款で確認してください。どんな場面が補償対象外になりやすいかは配送事故対応の記事で、保険の種類と選び方は軽貨物ドライバーが入るべき保険の種類と費用・事業用保険の選び方で解説しています。
なお、自動車保険の対物賠償は「他人の財物」を補償するものですが、自分が運んでいる受託貨物の扱いは保険会社・契約ごとの約款で決まります。貨物の損害が自動車保険でカバーされると思い込まず、約款の「補償されない場合」を確認しておくことが大切です。
ケース別の自己負担額シミュレーション
ここでは、次の前提を置いた仮定の試算を示します。保険条件や契約条項は説明のための例で、実在の商品・契約の数値ではありません。
- 貨物保険の条件(仮定):支払限度額 1事故100万円、免責金額 1事故3万円
- 保険金=(賠償額 − 免責金額)を支払限度額まで、と仮定
- いずれも運送人側に責任があり、悪意・重過失はなく、免責事由にも当たらないものとする
| ケース | 賠償額(約款第47条で算定) | 契約・保険の条件(仮定) | 保険金 | ドライバー自己負担 |
|---|---|---|---|---|
| A | 48,800円(例1) | 保険なし・全額負担型 | 0円 | 48,800円 |
| B | 48,800円(例1) | 元請の保険・免責額はドライバー負担 | 18,800円 | 30,000円 |
| C | 20,000円 | 元請の保険・免責額はドライバー負担 | 0円(免責金額未満) | 20,000円 |
| D | 1,500,000円 | 元請の保険・填補されない損害はドライバー負担 | 1,000,000円 | 500,000円 |
| E | 48,800円(例1) | 上限型「1事故1万円まで」 | ― | 10,000円 |
| F | 60,000円の高価品(例3)・通知なし | 約款第45条で運送人免責 | ― | 原則0円(ただし契約で別の定めがないか確認) |
ケースDの計算は、1,500,000円 − 30,000円 = 1,470,000円が支払限度額100万円を超えるため保険金は100万円、残り50万円が填補されない損害となります。自己負担が大きく跳ね上がるのは「支払限度額を超える高額な荷物」のときです。家具・家電・業務用機器など単価の高い荷物を扱う案件では、保険の支払限度額が荷物の価額に見合っているかを事前に確認しておく価値があります。
ケースCのように、損害が免責金額より小さい事故では保険金は出ず、全額が自己負担になります。少額の破損が続くと保険に入っていても負担が積み上がる点は、見落としやすいところです。
報酬からの天引きとフリーランス法
損害額を委託料(報酬)から差し引く運用には、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が関係します。同法第5条第1項第2号は、一定期間以上の業務委託について、発注者が「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること」を禁止しています。ここでいう期間は、同法施行令第1条で1か月とされています(契約の更新で1か月以上継続する場合を含む)。
つまり、ドライバーに落ち度がない破損(荷送人の梱包不良、天災など)を理由に報酬を減らすことは、この規定に抵触しうるということです。落ち度がある場合でも、控除される金額が、約款の算定方法から見て妥当な賠償額や契約で定めた負担割合を超えていないか、明細で確認しましょう。報酬の支払トラブル全般は軽貨物の報酬未払い対応|フリーランス法と回収5ステップも参考になります。
請求されたときに確認したい金額面のチェックリスト
元請や荷主から賠償を求められたら、支払う前に次の点を順に確認すると、過大な負担を避けやすくなります。
| 確認項目 | 見るポイント | 根拠 |
|---|---|---|
| 価額の基準 | 購入時・定価ではなく、届け先・届くはずだった時点の市場価格になっているか | 約款第47条第1項、商法第576条第1項 |
| 損傷の算定 | 全額請求ではなく「無傷の価額 − 損傷後の価額」の差額になっているか。全額なら貨物の引渡しを求められるか | 約款第47条第2項・第51条 |
| 運賃の控除 | 受け取らなかった運賃が差し引かれているか | 約款第47条第3項 |
| 免責事由 | 梱包不良・天災・貨物の欠陥など、責任を負わない事由に当たらないか | 約款第44条 |
| 高価品 | 1kg当たり2万円超などの高価品で、種類・価額の通知があったか | 約款第10条・第45条 |
| 受取時の留保 | 荷受人が異議なく受け取っていないか。隠れた損傷なら2週間以内に通知があったか | 約款第46条 |
| 期間 | 引渡しから1年以内の請求か(下請の延長規定も確認) | 約款第49条 |
| 契約条項 | 負担範囲(全額・免責額のみ・上限あり)がどう書かれているか | 業務委託契約書 |
| 保険の適用 | 保険請求をしたか。支払限度額・免責金額はいくらか | 保険証券・保険約款 |
| 報酬控除 | 落ち度がないのに減額されていないか | フリーランス法第5条第1項第2号 |
金額の根拠(見積書・販売価格の資料・修理見積・鑑定結果)を書面で出してもらい、納得できない点は元請に質問するのが基本です。価額に争いがあれば、約款第47条第4項のとおり第三者の鑑定・評価で決める道があります。
よくある質問
荷物を壊したら、定価で弁償しなければいけませんか?
約款・商法上の基準は定価ではなく、「引渡しがされるべき地及び時」における価額(市場価格)です(約款第47条、商法第576条)。実売価格が定価より安い商品なら、定価での請求は根拠が弱いことになります。ただし、業務委託契約で別の定めがある場合はその内容も確認が必要です。
損傷の場合も、商品代金を全額払う必要がありますか?
損傷の賠償額は「無傷だった場合の価額」と「損傷した状態の価額」の差額です(約款第47条第2項)。全額を支払う場合は、全部の価額を賠償したことになり、その貨物に関する権利は運送人側が取得します(第51条)。
貨物保険に入っていれば自己負担はゼロですか?
ゼロとは限りません。一般に保険には免責金額(1事故あたりの自己負担額)と支払限度額があり、免責金額分と限度額を超える部分は保険金が出ません。対象外の貨物や事故態様もあるため、保険証券と約款で確認してください。
時間指定に遅れて荷主に損害が出たら、いくら払うことになりますか?
延着による損害賠償の額は、約款第47条第5項により運賃、料金等の総額が上限です。ただし悪意・重大な過失による延着は、第48条により一切の損害の賠償となります。
高価品と知らずに運んで壊した場合も弁償が必要ですか?
約款第10条の高価品(貴金属・有価証券、美術品・骨董品、梱包込みで1kg当たり2万円を超える貨物など)で、荷送人が種類と価額を通知していなかった場合、運送人は原則として責任を負いません(第45条第1項)。ただし、運送人が契約時に高価品と知っていた場合や、故意・重大な過失による損害の場合は例外です(同条第2項)。
配達から数日後に「中身が壊れていた」と言われました。応じる必要はありますか?
荷受人が留保せずに受け取ると一部滅失・損傷の責任は消滅しますが、外から分からない損傷は引渡しから2週間以内に通知があれば責任は残ります(約款第46条第1項)。元請から下請として運んだ場合は、元請が通知を受けた日から2週間まで延長されます(同条第3項)。通知の日付と損傷の状況を確認しましょう。
破損の弁償額を報酬から勝手に差し引かれるのは違法ですか?
1か月以上の業務委託であれば、フリーランス法第5条第1項第2号により、ドライバーに責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額することは禁止されています。落ち度がある場合でも、控除額の根拠(算定方法・契約上の負担範囲)を明細で確認することが大切です。
まとめ:まず賠償額の算定を確認し、次に契約と保険で自己負担を読む
軽貨物で荷物を破損したときの弁償額は、標準貨物軽自動車運送約款第47条(商法第576条)により、届け先・届くはずだった時点の価額を基準に、全部滅失なら価額そのもの、損傷なら価額の差額から、運賃を控除して算定されます。そのうえで、免責事由(第44条)・高価品の特則(第45条)・受取時の留保と2週間の通知(第46条)・1年の期間(第49条)によって責任が否定・消滅する場合があり、悪意・重大な過失ならこれらの算定ルールを超えて一切の損害を負うことになります(第48条)。
委託ドライバーの手元から出る金額は、この賠償額を業務委託契約の負担条項と貨物保険の免責金額・支払限度額に当てはめて決まります。高額な荷物を扱う案件ほど、契約前に「負担範囲」「保険の限度額」「免責金額」の3点を数字で確認しておくことが、いざというときの自己負担を小さくする一番の備えです。
参考情報
- 国土交通省「標準運送約款」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000009.html
- 国土交通省「標準貨物軽自動車運送約款(平成15年国土交通省告示第171号・最終改正 令和7年国土交通省告示第193号)」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001881519.pdf
- e-Gov法令検索「商法」(第575条〜第577条、第584条、第585条) https://laws.e-gov.go.jp/law/132AC0000000048
- e-Gov法令検索「民法」(第420条) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(第5条) https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」(第1条) https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200

