軽貨物でドライバーを雇う・業務委託する違い|必要な手続きと偽装請負の線引き

経営・独立

※本記事は広告(PR)を含みます

軽貨物で1台目が回り始め、「そろそろ2台目を出して人に走ってもらおう」と考えたとき、最初にぶつかるのがその人を「雇う」のか、「業務委託で仕事を回す」のかという選択です。求人の出しやすさや目先の手取りで決めてしまいがちですが、この選択で変わるのは給与の払い方だけではありません。加入させる保険、税務署やハローワークへの届出、労働時間の上限、運送事業としての安全管理の義務、そして万一のときに誰が責任を負うのかまで、まるごと変わります。

しかも、どちらに当たるかは契約書のタイトルでは決まりません。「業務委託契約」と書いてあっても、実態が雇用なら法律上は労働者として扱われます。軽貨物の世界で「業務委託ドライバー」を使う形は珍しくありませんが、線引きを知らないまま始めると、後から労働保険料の遡及徴収や未払い残業代の請求を受ける側に回りかねません。

この記事では、ドライバーを雇用する場合と業務委託する場合の違いを、法令の条文と厚生労働省・国税庁・国土交通省の公表資料で確認できた範囲で整理します。数値や期限は2026年9月時点で確認できたものだけを載せ、確認できなかったものは書いていません。

  1. 結論:「雇う」か「委託する」かは実態で決まり、選んだ側の義務がまるごと付いてくる
  2. 雇用と業務委託の違い早見表
  3. 「労働者」かどうかの判断基準——運送業ならではの線引き
    1. 指揮監督に「当たらない」もの・「当たる」もの
    2. 諾否の自由・代替性・報酬の決め方
  4. ドライバーを雇用する場合に必要な手続き
    1. 労災保険と雇用保険
    2. 健康保険・厚生年金
    3. 源泉徴収と給与支払事務所の届出
    4. 労働条件・最低賃金・労働時間
    5. 運送事業としての義務(雇った運転者の管理)
  5. 業務委託(再委託)する場合に必要なこと
    1. 委託先も貨物軽自動車運送事業者であること
    2. フリーランス法による取引条件の明示と支払期日
    3. 多重下請の抑制と請負階層の通知
    4. 源泉徴収・消費税・労災の扱い
  6. 偽装請負になるパターンと、その代償
  7. 貨物軽自動車安全管理者は誰が選任するのか
  8. 2028年6月からの改正で、委託単価の決め方も変わる
  9. どちらを選ぶべきか:判断の順番
  10. よくある質問
    1. 家族に手伝ってもらう場合も雇用の手続きが必要ですか?
    2. 業務委託ドライバーに最低賃金は関係ありますか?
    3. 委託先の事故は誰の責任になりますか?
    4. 業務委託先から源泉徴収をしなくて本当に大丈夫ですか?
    5. 最初は業務委託で始めて、あとから雇用に切り替えられますか?
    6. パートのドライバーを雇う場合も雇用保険に入れる必要がありますか?
  11. まとめ

結論:「雇う」か「委託する」かは実態で決まり、選んだ側の義務がまるごと付いてくる

先に要点を置きます。

  • 雇用する場合、あなたは「使用者」になります。労災保険・雇用保険の手続き、給与からの源泉徴収、労働条件の明示、労働時間の管理(トラック運転者向けの改善基準告示を含む)、最低賃金の遵守が一式で発生します。
  • 業務委託する場合、相手は独立した事業者でなければなりません。軽貨物の運送を任せるなら、相手自身が貨物軽自動車運送事業の届出をした事業者であることが前提です。発注側としては、フリーランス法による取引条件の明示や、多重下請を抑える措置が求められます。
  • どちらに当たるかは契約の名称ではなく、指揮監督の有無や報酬の性格などの実態で判断されます。運送業には、厚生労働省の判断基準に「傭車運転手」という専用の項目があり、運送業ならではの線引きが示されています。
  • 2025年4月からは、軽貨物の事業者にも貨物軽自動車安全管理者の選任や業務記録・事故記録などが義務になりました。雇用した運転者はあなたの事業の運転者として管理対象になり、委託先は自分で選任する立場になります。

つまり「どちらが得か」の前に、自分が引き受けられる管理の量で選ぶ問題です。以下、項目ごとに見ていきます。

雇用と業務委託の違い早見表

同じ「2台目を人に走らせる」でも、法律上の扱いはここまで違います。

項目 雇用(従業員ドライバー) 業務委託(再委託)
相手の立場 労働基準法第9条の「労働者」 独立した事業者(軽貨物なら自ら届出をした貨物軽自動車運送事業者)
支払うお金 賃金(給与)。最低賃金法の適用あり 報酬(運賃・委託料)。最低賃金法の適用なし
労災保険 1人でも雇えば適用事業(事業主が保険料を負担) 委託先は労働者ではないため対象外。本人が特別加入で備える
雇用保険 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで被保険者 対象外
健康保険・厚生年金 法人は強制適用。個人事業は運送業で常時5人以上なら強制適用 委託先が自分で国民健康保険・国民年金等に加入
源泉徴収 給与から所得税を源泉徴収し翌月10日までに納付 運送の対価は所得税法第204条の列挙に含まれず、原則として源泉徴収の対象外
消費税の仕入税額控除 給与は課税仕入れに当たらない 課税仕入れに当たる(控除には適格請求書等の保存が必要)
労働時間の上限 労働基準法+改善基準告示で使用者が管理 委託先が事業者として自ら改善基準告示の範囲に収める
指示の出し方 経路・出発時刻・運送方法まで指示できる 運送物品・届け先・納入時刻の指定まで。経路や出発時刻を管理すると労働者性が強まる
貨物軽自動車安全管理者 あなたの営業所で選任した管理者が、雇った運転者も管理 委託先が自分の事業として選任(一人で事業を行う場合も必要)

表の中で見落とされやすいのは、業務委託でも「発注する側の義務」がゼロにはならない点です。フリーランス法の取引条件明示や、真荷主から受けた仕事を再委託するときの多重下請対策は、委託する側に課されています。

「労働者」かどうかの判断基準——運送業ならではの線引き

労働基準法第9条は、労働者を「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。厚生労働省は、労働者に当たるかどうかは契約の形式や名称にかかわらず、契約内容・労務提供の形態・報酬などの実態から総合的に判断するとしています。判断の土台になっているのが、1985年(昭和60年)の労働基準法研究会報告です。

この報告は、自分のトラックで他人の依頼を受けて運送する「傭車運転手」について、運送業に特有の判断基準を示しています。軽貨物の業務委託に当てはめると、要点は次のとおりです。

指揮監督に「当たらない」もの・「当たる」もの

報告は、運送物品・運送先・納入時刻の指定は、運送という業務の性格上当然であり、指揮監督の有無とは関係しないとしています。「この荷物を、この住所に、何時までに」と指定するだけで、ただちに雇用とみなされるわけではありません。

一方で、運送経路や出発時刻の管理、運送方法の指示などがあり、運送業務が発注者の管理下で行われていると認められる場合は、指揮監督関係を肯定する重要な要素になるとしています。契約した運送以外の業務(倉庫作業や事務所の雑務など)を指示して従事させていることも、指揮監督を補強する要素として挙げられています。

諾否の自由・代替性・報酬の決め方

  • 諾否の自由:個々の仕事の依頼を断る自由があれば、指揮監督関係を否定する重要な要素になります。
  • 代替性:本人以外の者が代わりに運ぶことや補助者を使うことが認められていれば、指揮監督関係を否定する要素になります。
  • 報酬の性格:出来高ではなく時間単位・日単位で支払う場合は、額が高くても労務対償性が強く、使用従属性を補強する重要な要素になるとされています。
  • 車両の負担:高価な車両を自ら所有していることは「事業者性」を推認させる要素です。裏を返せば、発注者が用意した車両で走らせる形は、事業者性を弱める方向に働きます。
  • 専属性:他社の仕事を受けることが制約されている、報酬に固定給的な部分がある、といった事情は労働者性を補強する要素のひとつです。

「日当制で、毎朝決まった時刻に集合させ、ルートも指示し、自社の車両を貸して、他社の仕事は禁止」という形は、契約書の名前が業務委託でも、上の基準に照らすと雇用に近い要素がそろってしまいます。業務委託を選ぶなら、報酬は運送の単位で決め、経路や時間の管理はせず、相手が自分の車両と届出で走る形を崩さないことが前提になります。

ドライバーを雇用する場合に必要な手続き

1人目を雇った時点で、あなたの事業は労働保険の適用事業になり、給与を支払う源泉徴収義務者にもなります。主な届出を期限順に並べると次のとおりです。

手続き 期限と提出先
労働保険 保険関係成立届 保険関係が成立した日の翌日から10日以内/労働基準監督署
労働保険 概算保険料申告書 保険関係が成立した日の翌日から50日以内/労働基準監督署・都道府県労働局・金融機関等
雇用保険 適用事業所設置届 設置の日の翌日から10日以内/ハローワーク
雇用保険 被保険者資格取得届 資格取得の事実があった日の翌月10日まで/ハローワーク
健康保険・厚生年金 被保険者資格取得届(適用事業所の場合) 雇い入れから5日以内/年金事務所等
給与支払事務所等の開設届出書 開設から1か月以内/所轄の税務署

労災保険と雇用保険

労災保険法第3条は「労働者を使用する事業」を適用事業としており、人数の下限はありません。労働保険徴収法第3条により、保険関係は事業が開始された日に成立し、第4条の2で成立の日から10日以内の届出が求められます。厚生労働省は、指導を受けても成立手続きをしない事業主には職権で成立させ、保険料を遡って徴収し、追徴金も徴収すること、さらに故意・重大な過失で届出をしていない期間に労災が起きた場合は、給付に要した費用の全部または一部を事業主から徴収することを示しています。

雇用保険は、雇用保険法第6条により、週の所定労働時間が20時間未満の人や、31日以上の雇用見込みがない人は適用除外です。なお、この「週20時間」の基準を「週10時間」に引き下げる改正法がすでに成立しており、2028年10月1日に施行される予定です。短時間のドライバーを雇う計画なら、この変更も織り込んでおく必要があります。

健康保険・厚生年金

厚生年金保険法第6条は、個人事業の場合、法定の業種で常時5人以上の従業員を使用する事業所を強制適用としており、その業種には「貨物又は旅客の運送の事業」が含まれています。法人の場合は従業員数にかかわらず強制適用です。日本年金機構は、パート等でも1週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の従業員の4分の3以上であれば被保険者になるとしています。

個人事業で従業員4人以下なら強制適用ではありませんが、法人化した瞬間に社会保険の手続きが必要になる点は、法人化を考えるときの重要な判断材料です。また貨物自動車運送事業法第25条(第36条第2項で軽貨物に準用)は、健康保険法等で納付義務を負う保険料の納付を「事業の適確な遂行」の基準に含めています。社会保険料の未納は、運送事業の側でも問題になりうるということです。

源泉徴収と給与支払事務所の届出

所得税法第183条により、給与を支払う者は支払いの際に所得税を源泉徴収し、翌月10日までに納付しなければなりません。例外は「常時2人以下の家事使用人のみ」に給与を支払う個人(第184条)に限られ、ドライバーは当てはまりません。新たに給与の支払いを始めるときは、第230条に基づき給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に税務署へ提出します。

労働条件・最低賃金・労働時間

  • 労働条件の明示:労働基準法第15条により、賃金・労働時間などの労働条件を契約締結時に明示する義務があります。
  • 最低賃金:最低賃金法第4条により、地域別最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。歩合給で雇う場合も、労働基準法第27条により労働時間に応じた一定額の保障給が必要です。「1個いくら」の完全歩合で最低賃金を割り込む設計は、雇用では成り立ちません。
  • 時間外労働:法定労働時間は1日8時間・週40時間(第32条)で、超える場合は36協定の締結と届出が必要です(第36条)。貨物自動車運送事業の運転業務は、附則第140条により時間外労働の上限が年960時間とされています。
  • 改善基準告示:トラック運転者は、1年の拘束時間3,300時間以内・1か月284時間以内、1日の拘束時間は原則13時間以内(最大15時間)、休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らないこと、運転時間は2日平均で1日9時間・2週平均で1週44時間以内、連続運転は4時間以内とされています(令和6年4月適用)。
  • 就業規則:常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則の作成と届出が必要です(第89条)。

運送事業としての義務(雇った運転者の管理)

軽貨物の運送は、雇った運転者があなたの届出した事業用自動車で行うことになります。貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づき、四輪の軽自動車で運送する事業者には次のような義務があります。

  • 貨物軽自動車運転者等台帳を運転者ごとに作成し、営業所に備え置く(第9条の6)。運転者でなくなった場合はその日と理由を記載して3年間保存
  • 初任運転者への特別な指導と適性診断(第10条第2項)。軽貨物では「運転者として初めて事業用自動車に乗務する者」が対象で、65歳以上の人や死傷事故を起こした人も対象
  • 点呼(第7条)と点呼記録の1年間保存、業務記録の作成と1年間保存(第8条)
  • 国土交通省のリーフレットでは、雇い入れ時と年1回の健康診断の受診、毎年の指導・監督とその記録の3年間保存も求められています(事業主本人の受診の考え方や受け方・費用は軽貨物の健康診断の解説を参照)

車両そのものを増やす手続き(2台目の届出事項の変更と黒ナンバーの取得)は、軽貨物の増車で2台目を追加する手続きで順を追って解説しています。

🚐 雇ったドライバー用の2台目を用意するなら

雇用で2台目を回す場合、車両は事業者であるあなたが用意します。ニコノリは頭金0円から新車に乗れるカーリース。エンキロは月額基本料金+走行距離1kmごとの距離料金で支払う距離払いのカーリースです(走行距離が伸びるほど支払いが増える仕組みのため、毎日長距離を走る配送用途では割高になりやすい点に注意。黒ナンバーでの事業用利用の可否は公式で要確認)。

▶ ニコノリで無料見積もりを確認する →

▶ エンキロ(距離払いカーリース)の料金を確認する →

業務委託(再委託)する場合に必要なこと

業務委託は「手続きが要らない楽な方法」と思われがちですが、実際には発注者として守るべきルールがいくつもあります。

委託先も貨物軽自動車運送事業者であること

他人の荷物を有償で軽自動車で運ぶ事業には、貨物自動車運送事業法第36条第1項の届出が必要です。委託先の個人が運送するなら、その人自身が届出をし、自分の事業用自動車(黒ナンバー)で運ぶのが前提になります。自社の車両を委託先に貸して走らせる形は、届出の名義と運送の主体がずれるうえ、前述のとおり労働者性を強める要素にもなるため、始める前に管轄の運輸支局へ確認してください。

フリーランス法による取引条件の明示と支払期日

2024年11月施行の特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)は、従業員を使用しない個人などを「特定受託事業者」とし、これに業務委託をする事業者に義務を課しています。

  • 取引条件の明示(第3条):業務委託をしたら直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する。この義務は、従業員のいない一人親方が発注する場合にもかかります
  • 支払期日(第4条):従業員を使用する個人や法人などの「特定業務委託事業者」は、役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める。元請から受けた仕事を再委託する場合は、所定の事項を明示したうえで、元委託の支払期日から30日以内とする特例がある

委託契約書に何を書くべきかは、受ける側の目線でまとめた業務委託契約書のチェックポイントが、そのまま発注する側の点検リストとしても使えます。

多重下請の抑制と請負階層の通知

貨物自動車運送事業法第23条の4は、真荷主から引き受けた運送を他の事業者に委託する場合、その先の二以上の段階にわたる委託を制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定め、第36条第2項でこれを軽貨物にも準用しています。また、元請から通知を受けた運送をさらに他の事業者に委託する場合は、元請の連絡先や請負階層などを委託先に通知する義務があります(第24条の5第3項、軽貨物に準用)。

「再委託は2回まで」と断定的に説明されることがありますが、2026年9月時点の条文上は多重委託の制限は努力義務であり、一律の回数制限が罰則付きで課されているわけではありません。とはいえ、自分が元請から受けた仕事を委託先に流すとき、委託先がさらに別の人へ流していないかを把握しておくことは、荷主との関係でも自分の安全管理のうえでも欠かせません。制度の全体像はトラック新法と白トラ規制で軽貨物はどう変わるかで整理しています。

源泉徴収・消費税・労災の扱い

  • 源泉徴収:所得税法第204条第1項が列挙する源泉徴収対象の報酬・料金に、貨物運送の対価は挙がっていません。そのため委託料は原則として源泉徴収の対象外です(個別の契約内容で判断が分かれる場合は税務署に確認してください)。
  • 消費税:消費税法第2条第1項第12号は、給与等を対価とする役務の提供を課税仕入れから除いています。委託料は課税仕入れになりえますが、仕入税額控除を受けるには委託先の適格請求書(インボイス)等の保存が必要です。国税庁は消費税法基本通達1-1-1で、給与か請負の報酬かが明らかでないときは、代替性・指揮監督・報酬請求の可否・材料や用具の供与などを総合勘案して判定するとしています。
  • 労災:委託先は労働者ではないため、あなたの労災保険ではカバーされません。個人で運送業を営む人は労災保険に特別加入できるため、委託先に加入状況を確認しておくのが現実的です。仕組みと費用は軽貨物の労災保険 特別加入の手続きと年間保険料を参照してください。

偽装請負になるパターンと、その代償

厚生労働省は、契約の形式と実態が一致しないものを「偽装請負」としており、その中には個人事業主への再委託の形をとりながら、実態から見てその個人事業主が労働基準法上の労働者と判断されるものも含まれるとしています。軽貨物で起きやすい形を、前述の判断基準に沿って並べると次のようになります。

  • 毎朝の集合時刻・出発時刻・配送ルートを発注者が決め、守らないと不利益がある
  • 報酬が日当・時給で、運んだ量と関係なく決まっている
  • 発注者の車両を無償または形式的な賃料で使わせている
  • 本人以外が代わりに走ることを認めていない
  • 運送以外に、倉庫作業や事務所の片付けなどを指示している
  • 他社の仕事を受けることを禁じている

こうした実態で労働者と判断されると、業務委託として処理してきたお金が「賃金」として扱い直されることになります。労働保険の成立手続きを怠っていた場合の遡及徴収と追徴金、労働時間の上限や最低賃金、時間外の割増賃金の問題が、過去にさかのぼって発生しうるということです。また、他社の業務委託ドライバーを自社の指揮命令下で働かせる形は、職業安定法第44条が禁じる労働者供給や、労働者派遣法の問題にもつながります。

逆に言えば、「指示したい」「時間で管理したい」「自社の車で走らせたい」なら、最初から雇用を選ぶのが筋です。業務委託の形は、相手に裁量を渡せる仕事でこそ成り立ちます。

貨物軽自動車安全管理者は誰が選任するのか

2025年4月から、貨物自動車運送事業法第36条の2により、四輪の軽自動車で運送する貨物軽自動車運送事業者は、営業所ごとに貨物軽自動車安全管理者を1人選任し、運輸支局等を通じて届け出なければならなくなりました。選任できるのは、登録講習機関の講習を選任日前2年以内に修了した人などで、選任後も2年ごとの定期講習が必要です。国土交通省は、一人で事業を行っている場合でも選任・届出が必要としています。

  • 雇用の場合:あなたの営業所の安全管理者(多くはあなた自身)のもとで、雇った運転者の点呼・業務記録・指導監督・適性診断を行います。人を増やすほど、この管理の手間はあなた側に積み上がります。
  • 業務委託の場合:委託先はそれ自体が貨物軽自動車運送事業者なので、自分で安全管理者を選任し、自分で点呼や記録を行う立場です。委託先を選ぶときは、届出と安全管理者の選任が済んでいるかを確認項目に入れてください。

なお、国土交通省のリーフレットによれば、2025年3月末までに経営届出をしていた事業者は2027年3月までに選任すればよい一方、2025年4月以降に届出をした事業者には猶予期間がなく、速やかな選任が必要です。

2028年6月からの改正で、委託単価の決め方も変わる

2025年6月に公布された貨物自動車運送事業法の改正のうち、2028年6月10日に施行される部分では、軽貨物に準用される規定が増えます。e-Gov法令検索で施行後の条文を確認すると、第36条第2項の準用先に次の2つが加わっています。

  • 第9条の3(適正原価を下回る運賃・料金の制限):国が適正原価を告示した場合、自分が引き受ける運送の運賃・料金だけでなく、他の事業者に委託する運送の運賃・料金も適正原価を下回らないようにしなければならない
  • 第24条の6(労働者の適切な処遇の確保):運転者その他の労働者の能力の公正な評価に基づく適正な賃金の支払いなど、処遇確保の措置を実施する

つまり施行後は、業務委託で「安く回す」設計そのものに法律上の下限がかかり、雇用する場合も処遇の確保が事業者の義務として明文化されます。今から2台目・3台目の体制を組むなら、委託単価を原価から積み上げて決める習慣をつけておくことが、そのまま将来の法令対応になります。

どちらを選ぶべきか:判断の順番

ここまでの内容を、判断の順番に落とすと次のようになります。

  1. 走り方を細かく指示したいか:出発時刻・ルート・車両を自分で決めたいなら雇用。相手に任せられるなら業務委託の余地がある
  2. 相手は自分で事業ができる人か:届出・黒ナンバー・安全管理者の選任・インボイス対応・特別加入まで自分で整えられる人でなければ、業務委託は成り立たない
  3. 管理の手間を引き受けられるか:雇用なら労働保険・源泉徴収・点呼・業務記録・適性診断をあなたが回す。事務の負担を見積もってから決める
  4. 将来の形:3台目以降も増やし、法人化まで見据えるなら、社会保険の強制適用や2028年改正を前提に、どちらの形でも原価と処遇を説明できる体制にしておく

台数ごとの売上と利益の見え方は、軽貨物ドライバーの月収100万円は何台からかで内訳を示しています。人件費を「給与」で持つか「委託料」で持つかで、社会保険料の負担や消費税の計算が変わるため、同じ売上でも手元に残る額が変わる点に注意してください。

雇用と委託のどちらで組むにしても、最初の1人を迎える前に、税務は税理士、労働保険・社会保険は社会保険労務士、運送事業の届出は運輸支局に、それぞれ自分のケースで確認しておくと手戻りがありません。

よくある質問

家族に手伝ってもらう場合も雇用の手続きが必要ですか?

同居の親族のみを使用する事業は、労働基準法第116条第2項により同法の適用除外とされていますが、労働保険や税務では別途の取扱いがあり、一概には言えません。家族に給与を支払うなら、所得税の青色事業専従者給与などの要件も関係するため、税務署や社会保険労務士に個別に確認してください。なお、家族が事業用自動車を運転する以上、運送事業としての点呼・業務記録・初任運転者への指導などの安全管理の義務は、雇用か否かにかかわらず生じます。

業務委託ドライバーに最低賃金は関係ありますか?

本当に独立した事業者であれば、最低賃金法は適用されません。ただし実態が労働者と判断されれば、最低賃金法第4条が適用され、支払ってきた報酬が最低賃金を下回っていれば差額の問題が生じます。報酬を「日当」や「時給」で決めていると、それ自体が労働者性を補強する要素になる点にも注意が必要です。

委託先の事故は誰の責任になりますか?

委託先は自らの届出で運送する事業者なので、事故の記録・報告や安全管理はまず委託先の事業者としての義務になります。そのうえで、あなたが元請から受けた仕事であれば、荷主や元請に対する契約上の責任はあなたに残ります。委託契約書で事故時の責任分担と保険の加入状況を取り決め、委託先の貨物保険・任意保険の加入を確認しておくのが基本です。

業務委託先から源泉徴収をしなくて本当に大丈夫ですか?

所得税法第204条第1項が列挙する源泉徴収の対象に、貨物運送の対価は含まれていません。したがって純粋な運送委託の報酬であれば、原則として源泉徴収は不要です。ただし契約の実態が雇用であれば、その支払いは給与として源泉徴収の対象になります。「源泉徴収していないから業務委託」という逆算は成り立たない点に注意してください。

最初は業務委託で始めて、あとから雇用に切り替えられますか?

切り替えは可能です。雇用に切り替えた日から、労働保険の成立届(10日以内)、雇用保険の資格取得届(翌月10日まで)、給与支払事務所等の開設届(1か月以内)などの期限が動き出します。相手の側でも、自分の貨物軽自動車運送事業をどうするか(廃止の届出や車両の扱い)の整理が必要になるため、切替日を決めて双方で段取りを組んでください。

パートのドライバーを雇う場合も雇用保険に入れる必要がありますか?

2026年9月時点では、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば被保険者になります。2028年10月1日からは、この基準が週10時間以上に引き下げられる改正が施行される予定です。労災保険は、時間の長短にかかわらず労働者であれば対象です。

まとめ

軽貨物で2台目以降を人に任せるときに押さえるべき点は、次の5つです。

  • 雇用か業務委託かは契約の名称ではなく実態で決まる。運送業では、届け先や納入時刻の指定は問題にならないが、経路・出発時刻の管理や車両の貸与、日当払いは雇用に近づく要素になる
  • 雇用なら、労働保険の成立届(10日以内)・雇用保険の資格取得届(翌月10日まで)・給与支払事務所等の開設届(1か月以内)と源泉徴収、最低賃金と改善基準告示の遵守が一式で発生する
  • 業務委託でも、委託先が自ら届出をした貨物軽自動車運送事業者であることが前提で、発注側にはフリーランス法の取引条件明示や多重下請の抑制(努力義務)がかかる
  • 貨物軽自動車安全管理者は、雇用ならあなたの営業所で、委託なら委託先がそれぞれ選任する。一人で事業を行う場合も選任が必要
  • 2028年6月10日からは、軽貨物にも適正原価を下回る運賃・委託料の制限と労働者の処遇確保の規定が準用される

「指示したいなら雇う、任せられるなら委託する」。この原則を崩さずに、自分が引き受けられる管理の量から逆算して形を選ぶことが、台数を増やしても事業が崩れない組み立て方です。

🚐 増車の車両調達を比べる

ニコノリは頭金0円から新車に乗れるカーリース。エンキロは月額基本料金+走行距離1kmごとの距離料金で支払う距離払いのカーリースです(事業用利用の可否や走行距離に応じた総額は公式で要確認)。

▶ ニコノリで無料見積もりを確認する →

▶ エンキロ(距離払いカーリース)の料金を確認する →

参考にした一次情報:貨物自動車運送事業法(e-Gov法令検索)/労働基準法/特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律/厚生労働省「労働基準法における『労働者』とは」/厚生労働省「労働保険の成立手続」/トラック運転者の改善基準告示/国税庁 No.2110/国土交通省 貨物軽自動車運送事業の安全対策強化

Amazonのアソシエイトとして、軽貨物開業ナビは適格販売により収入を得ています。当サイトの記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
タイトルとURLをコピーしました