軽貨物の電子帳簿保存法|領収書の保存方法を個人事業主向けに解説

収入・経費

※本記事は広告(PR)を含みます

軽貨物ドライバーとして働いていると、証憑(しょうひょう)は毎日たまっていきます。ガソリンスタンドの紙レシート、ETCの利用明細、元請けやマッチングサービスのマイページからダウンロードする支払明細、ネット通販で買った台車やラッシングベルトの領収書PDF。これらを「どう保存すれば法律の要件を満たすのか」は、経費として何が認められるかとは別の論点です。

本記事は、電子帳簿保存法における領収書・請求書の保存方法だけに絞って解説します。2024年1月から電子取引データの保存ルールが本格適用され、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たさなくなりました。一方で、2年前の売上高が5,000万円以下の事業者は検索要件が不要という大きな緩和もあり、軽貨物の個人事業主のほとんどはこの緩和の対象に入ります。国税庁の一次資料をもとに、実務に落とし込める形で整理します。

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  1. 結論:軽貨物ドライバーに義務があるのは「電子取引データ保存」だけ
    1. 3区分の違いを一覧で整理する
  2. 軽貨物の日常で発生する証憑を「紙」と「電子取引」に仕分ける
    1. ECサイトの領収書はダウンロードしなくてよい場合もある
  3. 電子取引データ保存で満たすべき3つの要件
    1. 要件1:改ざん防止の措置をとる
    2. 要件2:ディスプレイ・プリンタを備え付ける
    3. 要件3:日付・金額・取引先で検索できるようにする
  4. 売上高5,000万円以下なら検索要件は不要(軽貨物ドライバー最大の朗報)
    1. 「基準期間がない」新規開業者も検索要件は不要
    2. ただし「売上高」の中身に注意点がある
  5. スマホだけで完結させる現実的な保存手順
    1. ステップ1:フォルダを1つ作る
    2. ステップ2:ファイル名を「日付_金額_取引先」で統一する
    3. ステップ3:受け取ったその場でフォルダに入れる
    4. ステップ4:事務処理規程を1枚印刷して保管する
    5. ステップ5:紙のレシートは従来どおり月別に保管する
  6. 要件どおりに保存できないときの「猶予措置」
    1. 「相当の理由」とは何か
    2. 猶予措置でも「紙だけ」は認められない
  7. 紙のレシートをスキャナ保存にするなら(任意・要件は厳しめ)
    1. 電子取引データを印刷してスキャナ保存する、はNG
  8. 保存期間と、守らなかった場合の不利益
    1. 保存期間は原則7年(一部5年)
    2. 守らなかった場合に起こりうること
  9. よくある質問
    1. Q1. ガソリンスタンドの紙レシートは、スキャンしてデータで保存しないといけませんか?
    2. Q2. 元請けからメールで届いた支払明細PDFを、印刷して紙のファイルに綴じています。これで大丈夫ですか?
    3. Q3. 検索できるソフトを買わないといけませんか?
    4. Q4. ETCの利用明細はどう保存すればいいですか?
    5. Q5. パソコンもプリンタも持っておらず、スマホだけで仕事をしています。要件を満たせますか?
    6. Q6. 改ざん防止のために有料のタイムスタンプサービスに入る必要がありますか?
    7. Q7. 猶予措置を使いたいのですが、税務署に申請書を出す必要はありますか?
    8. Q8. 会計ソフトを使えば全部自動で要件を満たせますか?
  10. まとめ:軽貨物ドライバーがやるべきことは3つだけ

結論:軽貨物ドライバーに義務があるのは「電子取引データ保存」だけ

最初に結論を書きます。電子帳簿保存法には3つの区分がありますが、すべての事業者に義務があるのは「電子取引データ保存」の1区分だけです。残りの2つ(電子帳簿等保存・スキャナ保存)は、やりたい人がやる任意の制度です。

この点を混同した解説が非常に多いので、法令の条文で確認しておきます。電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の条文は次のようになっています。

  • 第4条第1項・第2項(電子帳簿等保存)…「電磁的記録の保存をもって帳簿書類の保存に代えることができる」=任意
  • 第4条第3項(スキャナ保存)…「電磁的記録の保存をもって書類の保存に代えることができる」=任意
  • 第7条(電子取引)…「電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」=義務

「できる」と「しなければならない」の違いがそのまま任意と義務の違いです。つまり、軽貨物ドライバーが最低限やるべきことは次の2つに集約されます。

  1. 紙で受け取ったレシート・領収書は、これまでどおり紙のまま保存する(スキャンして捨てる義務はない)
  2. データで受け取った・データで送った請求書や領収書は、そのデータ自体を要件に沿って保存する(印刷した紙だけではNG)

3区分の違いを一覧で整理する

電子帳簿等保存
(法4条1項・2項)
対象 会計ソフトで作った仕訳帳・総勘定元帳、自分がPCで作った請求書の控え
義務/任意 任意
軽貨物ドライバーの実務 会計ソフトを使っていれば自然に該当。「優良な電子帳簿」にすると特典あり
スキャナ保存
(法4条3項)
対象 紙で受け取った領収書・請求書などをスキャン/スマホ撮影したデータ
義務/任意 任意
軽貨物ドライバーの実務 やらなくてよい。やる場合は解像度・タイムスタンプ等の要件を全部満たす必要あり
電子取引データ保存
(法7条)
対象 メール添付のPDF請求書、Webサイト上で交付される領収書・支払明細など
義務/任意 義務
軽貨物ドライバーの実務 ここだけは避けられない。ETC明細・元請けの支払明細・ネット通販の領収書が該当

なお、電子帳簿等保存で「優良な電子帳簿」の要件を満たすと、青色申告特別控除65万円の適用要件(e-Tax申告に代えることができる)を満たせるほか、法第8条第4項により、その帳簿に関する過少申告加算税が5%軽減される措置があります。ただしこれも任意の制度で、義務ではありません。

軽貨物の日常で発生する証憑を「紙」と「電子取引」に仕分ける

実務で一番つまずくのが「これは電子取引なのか、紙なのか」の判定です。国税庁の定義では、電子取引とは「取引に関して、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データを受領又は交付すること」を指し、具体的には次の4類型が挙げられています。

  • いわゆるEDI取引
  • インターネット等による取引
  • 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルの場合を含む)
  • インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

軽貨物の現場に当てはめると、次のように仕分けられます。

よくある証憑 区分 保存の仕方
ガソリンスタンドで受け取る紙のレシート 紙の書類 紙のまま保存でOK。月ごとに封筒やクリアファイルへ。データ化の義務はない
給油カードのWeb明細(サイトからダウンロード) 電子取引 PDFをダウンロードして保存。紙に印刷しただけでは要件を満たさない
ETC利用照会サービスの利用明細・利用証明書 電子取引 PDF/CSVで出力して保存。そもそも紙が発行されないので必ず電子取引側になる
元請け・マッチングサービスのマイページで交付される支払明細(支払通知書) 電子取引 売上の根拠そのもの。毎月ダウンロードしてデータで保存する
ネット通販で買った車載用品の領収書PDF・注文履歴 電子取引 PDFやスクリーンショットでの保存も可。サイト上で確認できる状態を保つ方法もある(後述)
高速道路の料金所で受け取る紙の領収書 紙の書類 紙のまま保存でOK
インターネットでのみ確認できるクレジットカード明細・ネットバンキングの明細・水道光熱費の明細 電子取引 国税庁のチェックシートで明示的に電子取引の例として挙げられている
自分が元請けにメールで送った請求書PDF 電子取引 受け取った場合だけでなく送った場合も保存が必要。送信控えを残す

ポイントは、「紙で受け取ったものは紙のまま」「データで受け取ったものはデータのまま」が原則だということです。軽貨物ドライバーの場合、日々の給油レシートは紙、収入側の支払明細と車載用品の購入はデータ、という構成になりやすいので、この2系統を分けて管理すれば実務は回ります。

ECサイトの領収書はダウンロードしなくてよい場合もある

国税庁の一問一答(電子取引関係)では、ECサイト上で領収書等データの確認が随時可能な状態であれば、必ずしもダウンロードして保存していなくても差し支えない、という取扱いが示されています。ただし条件があります。

ひとつは、そのECサイト側が真実性の確保・検索機能の確保の要件を満たしていること。もうひとつは、各税法に定められた保存期間が満了するまで、そのサイト上で確認できる状態が続くことです。サイトの仕様変更や退会で確認できなくなる前にダウンロードして保存し直す必要がある、と明記されています。実務としては、素直に月次でPDFを落としてしまったほうが安全です。

電子取引データ保存で満たすべき3つの要件

電子取引データの保存には、原則として次の3つの要件があります。国税庁が2024年11月に公表した「電子取引データ保存要件チェックシート」の順に見ていきます。

要件1:改ざん防止の措置をとる

次の4つのうち、いずれか1つを満たせば足ります(施行規則4条1項1号〜4号)。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを授受する
  2. 受領したデータにタイムスタンプを付与する
  3. 訂正・削除の履歴が残るシステム等でデータを授受・保存する
  4. 改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用・備付けする

1〜3はシステム導入が前提になりますが、4は費用ゼロで対応できます。国税庁は個人事業者向けの事務処理規程サンプルをWordファイルで公開しており、これをもとに自分の屋号を入れて規程を定め、備え付けたうえで規程どおりに運用すれば要件を満たします。軽貨物の個人事業主が現実的に選ぶべきはこの4番です。

要件2:ディスプレイ・プリンタを備え付ける

データを画面と書面に出力できる状態にしておく、という要件です。ここで重要な取扱いがあります。国税庁のチェックシートには、「スマートフォンのみで取引を行っている場合など、パソコンやプリンタ等を保有していない場合でも、近隣の有料プリンタ等により速やかに出力できれば、この備付け要件を満たしているものと取り扱われます」と明記されています。

つまり、自宅にプリンタがなくてもコンビニのマルチコピー機で印刷できればよい、という整理です。ディスプレイやプリンタの性能・設置台数は要件とされていません。軽貨物ドライバーがスマホ1台で運用していても、この要件はクリアできます。

要件3:日付・金額・取引先で検索できるようにする

原則としては、①取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できること、②日付または金額を範囲指定して検索できること、③2以上の項目を組み合わせて検索できること、の3つが求められます。

ただし、この要件には後述する大きな緩和があり、軽貨物の個人事業主のほとんどは検索要件そのものが不要になります。次の章で詳しく見ます。

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売上高5,000万円以下なら検索要件は不要(軽貨物ドライバー最大の朗報)

電子帳簿保存法施行規則4条1項では、税務調査等の際に税務職員からのダウンロードの求めに応じることができるようにしていることを前提に、次のいずれかに該当すれば、すべての検索機能の確保の要件が不要とされています。

  • 判定期間に係る基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下
  • 電子取引データを出力した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしている

個人事業者の「基準期間」は、電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までです。2026年分の取引であれば、2024年の売上高で判定します。

「基準期間がない」新規開業者も検索要件は不要

国税庁の一問一答(問45)では、「判定期間に係る基準期間がない新規開業者、新設法人の初年(度)、翌年(度)の課税期間などについては、検索機能の確保の要件が不要となります」と明記されています。つまり、開業1年目・2年目の軽貨物ドライバーは売上高にかかわらず検索要件が不要です。開業直後にシステムを揃える必要はありません。

ただし「売上高」の中身に注意点がある

この5,000万円は消費税法37条の基準期間における課税売上高の判断基準の例によりますが、完全に同じではありません。一問一答では次の注意点が挙げられています。

  • 消費税および地方消費税の額を除いた税抜金額で判断する
  • 消費税法上の非課税売上額が含まれるため、免税事業者や簡易課税適用者であっても、非課税売上を含めると5,000万円を超える場合は該当しない
  • 規則が「売上高」と規定しているため営業外収入や雑収入は含まない。個人事業者の場合、家事消費高やその他の収入も含まれず、一時的に保有する資産の売却額なども含まれない

まずは自分の基準期間(2年前)の売上高を確認してください。5,000万円以下であれば、この緩和の対象になります。結果として、検索要件のためだけに専用ソフトを契約する必要はないというのが現実的な結論になります。

なお、消費税の免税事業者か課税事業者かという論点は、電子帳簿保存法とは別の制度です。そちらは軽貨物ドライバーのインボイス制度対応完全ガイドで整理しています。

スマホだけで完結させる現実的な保存手順

ここまでの要件を、軽貨物ドライバーの1日の動きに落とし込みます。専用ソフトを使わない前提の手順です。

ステップ1:フォルダを1つ作る

スマホやPCのクラウドストレージに「電子取引_2026」というフォルダを1つ作ります。年ごとに分けるだけで十分です。細かく取引先別に分けると、かえって入れ忘れが増えます。

ステップ2:ファイル名を「日付_金額_取引先」で統一する

国税庁のパンフレットでは、検索機能を確保する簡易な方法として「規則的なファイル名を付す方法」と「表計算ソフト等で索引簿を作成する方法」の2つが紹介されています。前者の例として示されているのが次の形式です。

2021年1月31日 ㈱霞商店からの110,000円の請求書なら「20210131_110000_㈱霞商店」

この形式をそのまま真似します。軽貨物の実例に置き換えると次のようになります。

  • 20260210_285400_○○運輸(元請けからの2月分支払明細)
  • 20260215_12800_ETC利用照会サービス(1月分のETC利用明細)
  • 20260220_6980_△△ストア(ネット通販で買ったラッシングベルトの領収書)

検索要件が不要な事業者であっても、このファイル名ルールは自分のためにやる価値があります。確定申告のときに探す時間が劇的に減るからです。

ステップ3:受け取ったその場でフォルダに入れる

PDFが届いたらその場でリネームしてフォルダへ。Webサイト上でしか見られない明細は、月初に前月分をまとめてダウンロードする日を決めておきます。「月初の休憩時間に前月分をまとめて落とす」と決めてしまうのが、続けるコツです。

ステップ4:事務処理規程を1枚印刷して保管する

国税庁が公開している個人事業者向けの「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のサンプルをダウンロードし、屋号と氏名を入れて印刷し、帳簿と一緒に保管します。あとは規程どおりに運用すれば、改ざん防止措置の要件を満たせます。

ステップ5:紙のレシートは従来どおり月別に保管する

ガソリンスタンドの紙レシート、高速道路の紙の領収書、コインパーキングの領収書などは、月ごとの封筒に入れて保管します。スキャンする義務はありません。屋号や事業用口座の整理と合わせて仕組み化しておくと管理が楽になります(参考:軽貨物の屋号の決め方と事業用口座の開設手順)。

要件どおりに保存できないときの「猶予措置」

2023年12月31日までの電子取引については「宥恕(ゆうじょ)措置」があり、データを印刷した書面だけを保存する対応が認められていました。この宥恕措置は2023年12月末で終了しています。

代わりに、2024年1月1日以後に行う電子取引については、令和5年度税制改正で創設された「猶予措置」が適用されます(施行規則4条3項)。要件は次の2つをともに満たすことです。

  1. 保存時に満たすべき要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること
  2. 税務調査等の際に、税務職員からの①電子取引データのダウンロードの求め、②電子取引データを出力した書面の提示・提出の求め、の両方に応じることができるようにしていること

「相当の理由」とは何か

国税庁の一問一答(問61)では、「システム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合」が該当するとされています。チェックシートでは「システム等の整備が間に合わない」「人手不足」「システム整備の資金不足」が例示されています。

逆に、システムもワークフローも整っていて要件どおり保存できるのに、資金繰りや人手不足の理由もなく保存していない場合は、猶予措置の適用を受けられません(取扱通達7-12)。

猶予措置でも「紙だけ」は認められない

ここが宥恕措置との決定的な違いです。一問一答には明確にこう書かれています。

令和6年1月以降に行う電子取引を対象とした猶予措置では、出力書面のみを保存することで対応することは認められておらず、出力書面の提示等に加え、電子データそのものも保存しておき、提示等ができるようにしておく必要があります

つまり、猶予措置を使う場合でも「データそのものは残しておく」ことが絶対条件です。逆に言えば、データをフォルダに放り込んでおくだけでも猶予措置の土俵には乗ります。なお、この猶予措置の適用を受けるにあたって、税務署への事前申請等の手続は必要ありません。

紙のレシートをスキャナ保存にするなら(任意・要件は厳しめ)

「毎日の給油レシートをスマホで撮って捨てたい」という需要はあると思います。これを可能にするのがスキャナ保存制度ですが、あくまで任意であり、要件は電子取引データ保存より厳格です。国税庁パンフレット「はじめませんか、書類のスキャナ保存【令和6年1月以降用】」に基づく主な要件は次のとおりです。

要件 内容(重要書類=契約書・納品書・請求書・領収書など)
入力期間の制限 ①作成・受領から速やか(おおむね7営業日以内)、または②業務処理サイクル(最長2か月以内)経過後、速やか(おおむね7営業日以内)。②は事務処理規程を定めている場合のみ
解像度 200dpi相当以上で読み取ること
階調 赤・緑・青の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)
タイムスタンプ 入力期間内に、総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプを付与。入力期間内に保存したことを確認できるシステムを使う場合はこの要件に代えられる
ヴァージョン管理 訂正・削除の事実や内容を確認できるシステム、または訂正・削除ができないシステムを使うこと
帳簿との相互関連性 スキャナデータと帳簿の記録事項の関連性を確認できるようにすること(一般書類は不要)
見読可能装置等 14インチ(映像面の最大径35cm)以上のカラーディスプレイおよびカラープリンタ、操作説明書の備付け
出力の品質 整然とした形式・書類と同程度に明瞭・拡大縮小可能・4ポイントの文字を認識できること
検索機能 取引年月日・取引金額・取引先での検索。ダウンロードの求めに応じられる場合は範囲指定検索と組合せ検索は不要

見てのとおり、14インチ以上のカラーディスプレイやタイムスタンプが要件に含まれるため、スマホ1台では成立しません。JIIMA認証を受けた市販の会計ソフト等を使うのが一般的です。1人で稼働する軽貨物ドライバーであれば、スキャナ保存は導入せず、紙は紙のまま保存するという判断で問題ありません。

なお、スキャナ保存を始めること自体に特別な手続きは原則不要ですが、開始日より前に受領した重要書類(過去分重要書類)をスキャナ保存する場合は、あらかじめ税務署に届出書を提出する必要があります。

電子取引データを印刷してスキャナ保存する、はNG

一問一答(問67)に、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面をスキャナ保存することは認められますか」→「認められません」という明確なQ&Aがあります。データで受け取ったものを一度印刷して撮り直す、という運用は成立しません。素直に元データを保存してください。

保存期間と、守らなかった場合の不利益

保存期間は原則7年(一部5年)

国税庁「記帳・帳簿等保存制度」の資料に基づく、青色申告の個人事業主の保存期間は次のとおりです。

保存が必要なもの 具体例 保存期間
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
現金預金取引等関係書類 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など 7年(※)
その他の書類 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など 5年

※前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の方は5年間となります。また、消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等や、インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写し・提供した電磁的記録については、上記にかかわらず7年間の保存が必要です。

白色申告の場合は、法定帳簿が7年、任意帳簿・決算関係書類・請求書や領収書などの書類が5年です。青色申告の届出をまだ出していない方は、軽貨物 開業届の提出後にやること7ステップで提出物の期限を確認してください。

守らなかった場合に起こりうること

青色申告の承認取消の対象になり得ます。一問一答(問66)には、災害その他やむを得ない事情または税務署長が相当の理由があると認める事由がなく、電磁的記録が要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得る、と書かれています。

ただし同時に、「保存時に満たすべき要件の違反があったことをもって直ちに必ず行われるものではなく」、事務運営指針に基づき真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上で判断する、とも明記されています。さらに、その取引が正しく記帳されて申告に反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由がないにもかかわらず直ちに承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったと判断されたりするものではない、とも注記されています。過度に恐れる必要はありませんが、対応しない理由にはなりません。

データの改ざんには重加算税が10%加重されます。電子帳簿保存法第8条第5項により、電子取引データやスキャナ保存データに記録された事項に関して隠蔽・仮装があった場合、国税通則法68条の重加算税の額に、その事実に基づく税額の100分の10(10%)を乗じた金額が加算されます。一問一答(問59)では、取引データを削除・改ざんして売上除外や経費の水増しをした場合のほか、保存されたデータの内容が事業実態を表していない場合(架空取引等)も加重対象になるとされています。

開業届そのものを出していない場合の扱いについては軽貨物の開業届を出さないとどうなる?2026年版ペナルティ全解説、記入方法については軽貨物の開業届の書き方を参照してください。

よくある質問

Q1. ガソリンスタンドの紙レシートは、スキャンしてデータで保存しないといけませんか?

いいえ。紙で受け取ったレシートは紙のまま保存し続けて問題ありません。紙をデータ化する制度(スキャナ保存)は電子帳簿保存法第4条第3項の「保存に代えることができる」という任意規定で、義務ではありません。義務があるのは第7条の電子取引データ保存だけです。

Q2. 元請けからメールで届いた支払明細PDFを、印刷して紙のファイルに綴じています。これで大丈夫ですか?

大丈夫ではありません。2024年1月以降の電子取引については、出力書面のみの保存は認められていません。PDFデータそのものを残す必要があります。印刷して綴じるのは構いませんが、それに加えてPDFをフォルダに保存してください。猶予措置を使う場合でも、データそのものの保存は必要です。

Q3. 検索できるソフトを買わないといけませんか?

多くの軽貨物ドライバーは不要です。税務調査時にダウンロードの求めに応じられることを前提に、2年前の売上高が5,000万円以下であれば、すべての検索機能の確保の要件が不要とされています。開業1年目・2年目で基準期間がない場合も同様に不要です。それでも探しやすさのために、「日付_金額_取引先」形式のファイル名は付けておくことをおすすめします。

Q4. ETCの利用明細はどう保存すればいいですか?

ETC利用照会サービスでは利用明細・利用証明書をPDFやCSVファイルで出力できます(ETC利用照会サービス「利用証明書発行および利用明細PDF/利用明細CSV出力」)。この明細はWebサイトを通じて取引情報を受け取る形になるため電子取引に該当します。月次でPDFまたはCSVをダウンロードし、「20260215_12800_ETC利用照会サービス」のようなファイル名を付けて保存してください。紙の領収書が発行されない以上、データで残す以外の選択肢がありません。

Q5. パソコンもプリンタも持っておらず、スマホだけで仕事をしています。要件を満たせますか?

満たせます。国税庁のチェックシートには、パソコンやプリンタ等を保有していない場合でも、近隣の有料プリンタ等により速やかに出力できれば備付け要件を満たしているものと取り扱う旨が明記されています。ディスプレイやプリンタの性能・設置台数も要件とされていません。

Q6. 改ざん防止のために有料のタイムスタンプサービスに入る必要がありますか?

必要ありません。改ざん防止措置は4つの選択肢のうちいずれか1つを満たせばよく、そのうちの1つが「改ざん防止のための事務処理規程を策定、運用、備付けする」方法です。国税庁ホームページに個人事業者向けのサンプルがWordファイルで公開されているので、これを使えば費用はかかりません。

Q7. 猶予措置を使いたいのですが、税務署に申請書を出す必要はありますか?

必要ありません。一問一答(問61)に「この猶予措置の適用を受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません」と明記されています。相当の理由の有無や出力書面については、必要に応じて税務調査等の際に確認されます。

Q8. 会計ソフトを使えば全部自動で要件を満たせますか?

ソフトによります。要件を満たすと認証を受けた製品には、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証マークが付されています。導入を検討する場合は、この認証の有無を確認してください。会計ソフトを使った確定申告の流れはfreeeでの確定申告にまとめています。

公開情報の要点:電子帳簿保存法は「電子帳簿等保存(法4条1項・2項)」「スキャナ保存(法4条3項)」「電子取引データ保存(法7条)」の3区分からなり、条文上「保存しなければならない」と規定され義務となっているのは電子取引データ保存のみです。電子取引データの保存には①改ざん防止措置(事務処理規程の策定・運用・備付けでも可)②ディスプレイ・プリンタの備付け③日付・金額・取引先での検索機能の確保、の3要件がありますが、税務調査等でダウンロードの求めに応じられることを前提に、判定期間に係る基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者、または出力書面を取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる事業者は、すべての検索機能の確保の要件が不要とされています。2023年12月31日までの宥恕措置は終了し、2024年1月1日以後は相当の理由がある場合の猶予措置に移行しましたが、猶予措置では出力書面のみの保存は認められず、電子データそのものの保存が必要です。青色申告者の帳簿・決算関係書類・現金預金取引等関係書類の保存期間は7年、その他の書類は5年です。

まとめ:軽貨物ドライバーがやるべきことは3つだけ

電子帳簿保存法の話は複雑に見えますが、1人で稼働する軽貨物ドライバーがやるべきことは次の3つに集約されます。

  1. 紙のレシートは紙のまま保存する。ガソリンスタンドのレシートも高速の紙領収書も、これまでどおり月別の封筒で構いません。スキャナ保存は任意であり、14インチ以上のカラーディスプレイやタイムスタンプなど要件が厳しいため、無理に導入する必要はありません。
  2. データで受け取った・送ったものは、データのまま1つのフォルダに入れる。ETC利用照会サービスの明細、元請けの支払明細、ネット通販の領収書PDF、自分が送った請求書PDF。ファイル名は「日付_金額_取引先」で統一します。2年前の売上高が5,000万円以下なら検索要件そのものが不要なので、専用ソフトは必須ではありません。
  3. 国税庁の事務処理規程サンプルを1枚印刷して保管する。規程どおりに運用すれば、改ざん防止措置の要件が満たせます。サンプルを使えば費用はかかりません。

そして保存期間は、帳簿・決算関係書類・領収書等が7年、請求書や納品書などその他の書類が5年です。要件どおりに保存できない事情があるうちは猶予措置がありますが、その場合でもデータそのものは必ず残すという一点だけは外せません。ここを押さえておけば、確定申告のたびに証憑を探し回る時間も減らせます。

個別の判断に迷う場合、特に自分の売上高が5,000万円の基準に近い場合や、複数車両で人を雇っている場合は、所轄の税務署または税理士に確認してください。

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